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(せ)カリスマ伝説 終

退職の日が迫る。
会社から早期退職の打診があったのが5月上旬のこと。
そこからなんやかんや上層部と揉め、8月退職が決まったのが5月下旬のこと。
なかなか壮絶な揉め方をしたので、6月以降の給与に影響することは覚悟していたが、
会社は私のちっぽけな予想など軽く上回り、直後の5月分の給与から大幅に減額してきた。
普通に働いていれば貰えたであろう給与(ボーナス含む)を考えると、被害額はざっと50万近くにはなるだろうか。
しかし私には最早訴えに出る気力も体力も残されてはおらず、手切れ金代わりと諦めてその条件を承諾した。
結果的には飛躍的に収入が向上することになったわけだから、そんな50万ぽっちのことはさっさと忘れてしまうに限る。
きっと地道に功徳を積んでいたご褒美として、神とか仏的な何かが転職先を宛てがってくれたのだろう。

****

考えれば考えるほど、カリスマの働き方は実にこの会社に適したものであったのではないかと思える。
どうせ成果を出したところで評価などされないのだから、この会社でずっとやっていこうとするならば、
既定路線でしかない低水準の対価に見合うよう仕事量の方を調節するカリスマメソッドを採択するしかない。
今更ながらこのことに気付いた私は、最後の1ヶ月ほどをカリスマに倣って過ごすことにした。

とは言え、流石にすぐに足がつくやり方ではまずい。
カリスマメソッドをそっくりそのまま真似するのではなく、更に発展させて完全なものを目指す。これこそ「仕事」だ。
まず本を買う。文学部出身なのに、最近めっきり活字を読む機会が減ってしまった。電車の中でも寝てばかりいる。
喫茶店やファストフード店は騒がしいし、居座って読書するにも最低コーヒー1杯くらいは頼まなければならない。
それよりも、私はタダで何時間でものんびり過ごせる場所を知っている。
横浜駅西口を出て五番街を抜け、幸橋を渡る。直結している相鉄ムービルの2Fへ。
ガラス戸を入って真っ直ぐ進むと左奥に見えてくるのは、そう、109シネマズの待合室である。
ソファーが並んでいてゆっくりすることができるのだが、横浜駅から徒歩5分という立地の割に人が少なく、
昼間のピーク時でもなければ人がいっぱいで座れないなどということはまずない。
それもこれも109シネマズで配給される映画の種類が少ないことに起因するのだが、
カリスマメソッド継承者にとってはありがたいことでしかない。ソファーに腰を下ろし、本を読む。眠くなったら寝る。

そんなことを続けているうちに、Googleがずっと位置情報を送信し続けてくる相鉄ムービルを新しい職場と勘違いし、
会社でiPhoneを開いても「新しい場所まであと10分」と案内してくるようになった。違う、そこじゃない。

****

8月8日、出勤日ではあるが業務は前日に全て終え、夜に送別会へ参加する。
この日はHKTの握手会で、栗原紗英ちゃんのレーンが混んでいて送別会に10分遅刻したのだが、まあ気にするまい。
歓送迎会や打ち上げの度に弾け弾けと言われていたギターを最後の日に初披露するなどして、
これまでの死ぬような思いが嘘だったかのように平和な時間が過ぎてゆく。

思えば、他人事として見ればこれほど面白い人が集まった会社もそうそうないのではないか。
鬼次長や兎仙人を始め、偏屈大王、素股課長、パブロ課長など、スピンオフが書けそうな人材が腐るほどいる。
そして、カリスマ。
カリスマに辞表をFAXさせた、そして私がこの会社に愛想を尽かせた諸悪の根源たる支店長は東京支店へ異動となり、
横浜支店には新しく若い支店長がやって来た。
この新支店長の下でなら、もしかしたらカリスマもやっていけるかもしれない。
この会社を去ることに唯一心残りがあるとするならば、もう伝説を目撃することはできないということだ。

送別会が終わる。直属の上司であったパブロ課長と握手を交わし、最後にカリスマとも固く握手をする。

「向こうに行っても頑張ってな。元気でやれよ」

変に先輩風を吹かせるカリスマの横顔に、初めていい意味でのカリスマを感じたのは、きっとまだ生暖かい夜風のせいだ。

辛い勉強、きつい仕事、面倒な家事。どんな立場になっても、多分大変なことは消えたりしないのだろう。
そんなときには、カリスマの伝説を思い出すことにしよう。
自分の悩みなんてちっぽけなものだと思わせる力が、カリスマにはある。そしてそれこそが、カリスマのカリスマたる所以なのだ。

支店長の怒鳴る声が聞こえてくる。
謝る振りをしながらチラリとこっちを見たカリスマは、口元だけ少し緩めて、不敵に笑っていた。

「頭おかしいんじゃないのかぁ?⤴」

(終)

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※この物語はフィクションだったりノンフィクションだったり、脚色を含んでいたりいなかったりします。

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ライブドアねとらじで不定期に放送中のラジオ「ふぉるすたーらじお」の面々による共同ブログです。

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