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(せ)婷婷 五

しばらく通っていると会話も増え、だんだん相手のことがわかってくる。
婷婷は2つ年上で、私と同い年の弟がいる。弟に彼女はいないらしい。
初めて日本に来たのは2年前だが、それまでも日本語の勉強はしていたので日常会話はほとんどペラペラ。
前の彼氏は同じ大学に通っていた在中日本人だが、日本に来るのをきっかけに別れたそうだ。
婷婷は恋人との写真やプレゼントなどは捨てずに持っておく方で、その彼氏との写真を見せてくれた。
大胆にキスなどしている。しかし体格のいいさっぱりとした青年で、不思議と嫌味な感じはしなかった。

もちろん私の話もした。
中高時代はキモオタだったこと、大学からギターを始めたこと、難儀な性格のせいでなかなか彼女ができないこと。
思えば、女性に対してこんなに肩肘張らずに話ができたのは初めてかもしれない。
いつしかのんびり話をするのを目的に100分と長めに時間をとるようにしていた。
それが巧妙な営業スキルなのだとしても構わない。客はお金を落として気持ちよくなり、店は儲けて得をする。
Win-Win以外の何物でもない。世の中はそうやって成り立っているのだ。

何より、話している最中の彼女の表情を見るのが好きだった。
年上だからとお姉さん風を吹かせてみたかと思えば、友達から送られてきたお下劣な動画を見てケラケラ笑う。
仕草のひとつひとつが人懐っこく、誰からも愛される人というのはこういう人のことを言うのだと思った。
店の売り文句には「恋人同士のような時間を」と書いてあるが、婷婷はまさしくそれを実現していた。
後から知ったことだが、この店は教育がしっかりしていて、どの嬢もルックスやサービスは一定水準を保っている。
その中でも婷婷はとりわけ優秀で、これが自分だけに向けた特別扱いでないはずがないと錯覚させるものがあった。
錯覚なんて言葉を遣うのはやめよう。私は確かに「特別」を感じていたのだ。
それは誰と比べてということではない。絶対的に特別であると感じる態度で接してくれていた。それで十分だ。

LINEのIDを交換して、「なんとなく寂しいから」と電話をかけてきたりもした。
「メリークリスマス」も「あけましておめでとう」も、婷婷から一番最初にメッセージが来た。
これが全部本心は嫌々やっていることだと思うほど、私の心は薄汚れてはいない。
行為中、婷婷が中国語で何事か囁き、「なんて言ったの?」と問うても「内緒だよ~」とはぐらかされることがあった。
「臭えんだよモヤシ野郎」と言っていたんだと思う人もいるだろう。そういう育ちの悪い人は筋斗雲には乗れない。可哀想に。
私愛用のAXEのコロンを臭いと思うかどうかは人それぞれだが、婷婷はいつもほんのり柑橘系の香りがした。

****

嘘のように楽しい日々だった。それはひとえに、婷婷の人柄によるところである。
しかし、そういう人は一所に留まっていていいはずがない。私とは違う、世界に羽ばたくべき人材だ。
出会いと別れのサイクルは普通よりも速く回る。それは夜の世界の、悲しい決まりなのだ。

(続く)

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※この物語はフィクションだったりノンフィクションだったり、脚色を含んでいたりいなかったりします。

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ライブドアねとらじで不定期に放送中のラジオ「ふぉるすたーらじお」の面々による共同ブログです。

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